Lesson 16. AGA4型の初期タイプではfrontal tuftを取り込むように脱毛することが多い
20歳代、strip FUT/FUSSでの前頭部修正の症例です!
見かけはM字ハゲですが、AGA脱毛としては軽度な状態ではありません。
strip FUT/FUSS:1500グラフト(最終グラフト数:1520グラフト)。

【術前】
HN分類(➡ 男性のAGAのHN分類表をご参考ください。):4型。
20歳代半ばから生え際の薄毛が気になり、脱毛の軽快がないために1年前から個人輸入でミノキシジルを開始したようです。
しかし、脱毛の改善を実感しなかったため、植毛術を目的に当院にご来院されました。
若年者であることやミノキシジルを内服使用していることもあり、脱毛部は完全にうぶ毛化しているわけではないので、パッと見ではそれほど脱毛が進行しているようには見えません(術前写真を参考)。
しかし、AGAの進行度は年齢の割に非常に高い症例であることがわかります。AGAの進行度は現時点でも中等度脱毛である4型であり、前頭部中心であるfrontal tuftを取り囲むように薄毛の状態となっています。このように、4型の初期タイプではfrontal tuftの後方が右から左にかけて薄毛領域の橋渡し現象”Bridging phenomenon of frontal baldness”が見られます。この現象は4型の初期に起こることが多く、前頭部中心の頭髪残存部は後方から前方に向かって年齢とともに徐々に進行し、最終的に4型の完全型である前頭部全体が禿げてしまいます。また、前頭部後方の頭頂部の頭髪も毛髪が細くなってきているので、将来的にはAGA5型の高度AGA脱毛まで進行することが予想できました。
以上の結果から、若年者にもかかわらずに高度AGA脱毛まで進行することが現時点でも予測できるため、植毛術以上に脱毛進行を予防するための薬物治療が重要になります。したがって、ある意味、このような状態を若年時に気づき、早期治療を開始・継続できる場合はAGAをほぼストップさせることができるので、長い目で見ると、植毛術を行わなくて済んだり、回数を減らすことができたり、ハゲに悩まされることがなくなってきます。
遺伝的素因:父方祖父はAGA脱毛者であったそうですが、詳細不明です。
ドナーの状態:後頭部のドナー密度は若干低密度です。
術式の選択:ご年齢的にドナー密度は低いこともありますが、ドナーの損失を最小限に抑えられるstrip FUT/FUSSを抵抗なく受け入れて選択されました。
【手術評価】
生え際のラインは日本人としては比較的高いラインですが、前頭部に平均移植密度35~40グラフト/㎠で移植しています。

【手術結果 - 術後3ヶ月目・術後1年目】
術後3ヶ月目を見ると、移植部の範囲がよくわかります。これは、移植領域の弱い元々の頭髪や移植毛自体が術後1ヶ月目前後に一時脱毛(ショックロス)を起こし、発毛は見られるものの、まだ細い毛髪であるうぶ毛の状態から発毛してくるためです。
そして、これらのうぶ毛は徐々に太く長く成長し、術後6~12ヶ月目で完成します。
1年目の結果を見ると、橋渡し部の分け目の締まり感や前頭部の頭髪の増加がわかります。M字部は勿論修正されています。
【strip FUT/FUSSのドナー部の結果:左右差が見られます】
20才代に対するFUTでは、損傷治癒の年齢的問題として、キズが開かないように特に注意する必要があります。
左の写真を見るとわかるように、線状のキズの部分を全体的に見ると特に気になることはありません。
しかし、よく見ると中央部から左側は全くキズがわからない状態ですが、右側は線状のキズから発毛する毛髪の密度が低い状態で治癒しています。
1つの予防策としては、無意識の状態で利き手側のキズを術後に触ることが多いことが原因であることもあり、術後3ヶ月間はあまりキズを触らないように注意することです。
若年者の場合が免疫反応が強いために、キズが気になりやすくなるかもしれませんが、キズを触ることはできるだけ避ける必要があります。
(2025年7月 K. Yamamoto記)